石川淳「佳人」

石川淳「佳人」再読。
石川の処女作。「書くことについて書く」なんて修飾がピッタリな短編小説。構成の見事さはこの頃から変わらず。
以下思いつきメモ。

  • 言表の物質性、生産性。語りが「虚構=現実」を作り出す。「わたし」とミサの関係がその例。
  • 中心の欠如。複数の中心、楕円?ただ、二焦点は固定されているのか。「わたし」とユラの関係。
  • 句、歌をひねることとはどんなことか。自らを空虚で埋め尽くすことができないときに、句が「自ずと」出てきた。空虚で満ちてはいなくとも、空虚は必要条件か。ここでは宣長の影響を考えるべき。
  • 空虚と鏡と死。空虚とは自意識の牢獄か、自意識の裂け目か、それとも・・・己の死を意識しながら死ぬことに憑かれたとき、もはや死ぬことはできない。
  • 分析、腑分けを拒否すること。存在をとらえること。感傷、共感を拒否すること。